【小説ネタバレ感想】閻魔堂沙羅の推理奇譚

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」木元哉多著を読みました。

第55回メフィスト賞、受賞作! 俺を殺した犯人は誰だ? 現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘――沙羅。赤いマントをまとった美少女は、生き返りたいという人間の願いに応じて、あるゲームを持ちかける。自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き。犯人特定の鍵は、死ぬ直前の僅かな記憶と己の頭脳のみ。生と死を賭けた霊界の推理ゲームが幕を開ける――

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※「閻魔堂沙羅の推理奇譚」を好きな方にとっては不快になる文章ですので気を付けてください。

 

はじめに

私はメフィスト賞ということだけで、読もうかなぁ~と思ってしまいます。ただ、受賞作58冊中25冊しか読んでいません。

コズミックとかハサミ男とか衝撃的でしたし、《あかずの扉》研究会シリーズやミリア・ユリシリーズ、『城』シリーズ、最近では上木らいちシリーズなどのシリーズものも好きです。

ということで、今回手に取ったのは、第55回メフィスト賞受賞の「閻魔堂沙羅の推理奇譚」です。結果としては、期待したものとは違うという感想です。

とはいえ、西尾維新の良さを「クビキリサイクル」と「新本格魔法少女りすか」と「化物語」を読んでも全く分からない人間ですので、ご了承ください。

 

感想

読み終えて思った感想は、「これでメフィスト賞なのか?」ということです。

 

メフィスト賞って、鋭利な刃物で読者を切りつけてくる感じなんですよね。

この作品は、まったく尖ったところがない。舞台やキャラクター設定に関しても良くある感じ。事件パートがありすべてのヒントが出て、そこからロジックを組み立てるというのは、「安楽椅子探偵」を連想しました。

 

ストーリーは悪くはない、むしろ良いと思います。涙腺にくる話もあれば、くそ野郎に鉄槌を喰らわせスッキリとなる話もあります。文章もわかりやすいが、それが仇になっているのかと思います。

 

個人的に気になる点としては、事件に対して同じ説明分が繰り返されることです。

パターンとしては、現実事件パート → 死後推理パート → 死後解答パート → 死後答え合わせパート → 現実エンディングパートという流れになります。

推理途中の解答へのロジックを、解答パートで推理パートをまとめただけの同じ説明をします。その後答合わせパートでは、前回の説明を踏まえた説明を繰り返します。現実に戻ると記憶がなくなるという設定なので、また同じロジックの説明文が書かれます。同じような内容を何度も何度も読まされる羽目になります。

 

次にミステリー部分です。

本来ミステリー小説って読者にいかにさりげなく伏線を提示するかにかかっていると思っています。こんなところに提示されていたのか!これとこれがつながるのか!!と解答で驚かされるのが楽しいです。今回の作品ではそれが一切ないです。伏線に関してはわかりやすくドーンっと提示されます。

また私は次の展開を予想しながら読み、ミスリードや予想外の展開で楽しみます。この作品では、伏線が分かりやすく提示される為、真相が途中で分かってしまいます。わかっている状態で、登場人物が見当違いの推理をするのに対してフラストレーションがたまります。

ミステリー小説でよくあるのが、短編の連作だと思って読んでいたら最後にすべてがつながる展開です。私はそういう作品が好きなので、この作品もきっと大仕掛けがあるはずと思って進めたのですが、そういうモノは一切なく普通の短編小説を4編まとめただけでした。

ミステリー部分に関しては、すべてが期待外れ。

 

とはいえ、ミステリークイズとしてみれば、難易度も高くないので楽しめます。

 

 もう4冊もシリーズがあるのですね。もう読まないとは思います。

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